由紀かほる「憂国記」

日記もどき 最新作の情報等ゝ

アマゾン・ブックレビュー、一番の防衛手段としては、レビューを読まないことだろふ、殊に、自作のものに関しては―総て、エネルギーと時間の浪費になるからだ

 皇紀弐阡六百八拾五年六月弐拾参日

 六時弐拾分起床。ヨガ。

 別名義の新作に数日前より取り掛るも、昨日の時点で筆が止る―モチーフは一月前ほどから泛んでいたのだが、どう云ふスタイルにするのか、さらにもう一つ物語を絡ませるかどうか等ゝ思案していて、書出すまで時間が掛ってしまった―ようやくアイデアが泛んで、書出したものの、ナカナカ筆が進まない―いや、其れでも書いているうちに、新たなアイデアも泛んでくるだろふ、と思っていたのだが―

 クリシュナムルティ《片隅からの自由》を読出して、一週間ほどだろふか―其の前には《人生をどう生きますか》を読んだ―此処では其の内容ではなく、あとがきの方が印象に残ってしまった―

 普段は訳者のあとがきは斜め読みする場合が多い事は、既に何度も書いてきたので、其の理由は省く―此の本の訳者は大野龍一と云ふ方である―其のあとがきに、思わず瞠目した―長いあとがきで、前半は本の解説だが、後半に至って赴きがガラリと変る―

 訳者は弐阡五年の時点で、未だワープロを使っている絶滅危惧種、と自ら書いている―本を訳している最中に、同じクリシュナムルティの訳者である大野純一氏から連絡を貰い、初めてアマゾンのブックレビューを読んだ、と云ふ―其処には《カスタマー》と称する者がいて、訳者の【不要なあとがき】をコキ下ろしているのだ―其のカスタマーの見下したような物云ひが、訳者の神経を逆撫でしたらしい―其のためか、あとがきの中で、訳者はわざわざアマゾンに掲載されている《カスタマー》の文章を、幾つも抜書して、怒りを含んだ反論を書き連ねているのである―

 其の気持ちはよく判る―所謂、匿名による公の、此処ではネット空間における批評ほど無責任で、底の浅い、唯我独尊なものはないだろふ―此れはレビューされる側に立ってみなければ判らない心境だろふ―

 此のあとがきが書かれたのが、弐拾年ほど前だから、訳者も今では其れなりの免疫も出来たのではないか、と思われる―

 本だけではない、映画やドラマのレビューも相当に似たような光景が―慣れてくれば、割引いて読む習慣がついてくるから、何時までも騙されはしない―いや、却ってカスタマーの浅学非才を泛き立たせる役割もあるだろふ―真っ当なレビューは、凡そ壱割程度ではないか―

 今回、此のあとがきを読んで、同意しつつも、其の憤慨ぶりに半ば苦笑したのも事実である―

 一番の防衛手段としては、レビューを読まないことだろふ、殊に、自作のものに関しては―総て、エネルギーと時間の浪費になるからだ―

 別名義の新作を棚上げにして、以前の作品を四作ほど再読し、手を入れてみた―玉石混淆と云った処だが、然程悪くはない―発信するまでは、もう少し時間が掛りそうだけど―

 明日、久しぶりのダッチオーブン―天気も良さそうだし、気温も上ってきたし、ようやく庭で飲食出来そうだ―其れに備えて、此れも久しぶりに手打ち饂飩を作ろふと思い立つ―何時もと同じでは面白くないから、今回はヨモギ饂飩にしよふと企んでみた―初挑戦である―ネットで彼是と検索して、処理の仕方から学習―

 既に、先月からヨモギはたっぷりと採取してあるが、此れは乾燥させて、入浴剤に使うためのものである―饂飩や餅にするなら、未だ大きく成長していないものがいいらしい―採取時期としては、六月迄とあるので、早速、例の神社裏の山へ出掛けてみる―精確な事は判らないが、ヨモギにも多くの種類があって、本州のものと北国のものとは違ふらしいのだが―

 裏山に到着して、なるべく小さい、若い芽の部分を中心に採取した―レシピに沿って、下処理を行ふ―洗って、重曹を入れた熱湯に入れ、一分ほど茹でる―水で冷やし、絞ってから、刻んでいく―

 色ゝなサイトで検索したが、多くはミキサーやフードプロセッサー、フードカッター等を使えとある、若しくは包丁で叩け、と―が、自前のミキサーとフードプロセッサーでは上手く処理が出来ない―理想はペースト状にするのだが、水が足らないのか、歯が回転しない―少しずつ水を加えて、ようやく動く―其れでも、水っぽくて、しかも余り細かくは裁断されていない―仕方なく、包丁で叩いて、どうにか近づけていく―細かくはなりはするものの、ペースト状には程遠い―此の時点で、此れは使えないかもしれない、と半ば諦め掛ける―取り敢えず、容器に入れて冷蔵庫に保存―

 明くる日、まずは饂飩を打つ―楽をしてホームベーカリーを遣ひ、寝かせた生地に昨日のヨモギのペースト状モドキを混ぜ合わせる―

 ヨモギの水分のせいか、簡単には混ざらない―どうにか、纏めて生地を四等分にして、パスタマシン用に伸ばしていく―が、矢張り水分が多いせいか、綺麗に伸ばすことが出来ない―已む無く、強力粉を混ぜ、何度となく繰り返す―

 此の時点で、失敗したな、と独りごちる―とは云え、放り出す訳にも行かず、ネバネバと粗っぽい生地に、強力粉、片栗粉を混ぜて、何度となく生地を伸ばしては畳み、また伸ばしていく―

 パスタマシンで細麺の形に切り分けていく―見た眼は淡い緑色の、慥かにヨモギ饂飩になってはいる―が、此れを茹でて、口に入れて果たしてどふか―冷蔵庫で一晩寝かせる―

 翌日、つまり昨日の昼、冷やし饂飩で試食―意外にもイケた―身内の評判も上ゝ―

此れなら明日のダッチオーブンの〆に出せるだろふ―

 今回、中力粉三百グラム、其れにヨモギを七拾グラムで試してみた―次回はもう少しヨモギを増やしてみていいかもしれない―或いは、ホームベーカリーで中力粉に混ぜたら、もっと簡単に出来るかもしれない―とは云え、今年のヨモギはもうそろそろ終りだし、ヨモギをペースト状にする手際を、どうにかしないことには―

 本日も執筆出来たことに感謝

 惟神霊幸倍坐世

 

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