由紀かほる「憂国記」

日記もどき 最新作の情報等ゝ

「いらっしゃませ」と顕れた店長さん―思わず、笑みが溢れたのは、動画で着ていたのと同じ、特徴ある柄の長着をお召になっていたためである

 皇紀弐阡八百六拾弐年壱拾壱月弐拾日

 六時起床。ヨガ。

 酵素米朝食。

 別名義の作品が、佳境に入る―既に下書きが出来上っていたが、其れを大幅にブラッシュアップ、今月中に仕上るだろふか―

 ノン・アルコホール生活が続く―もうまるで手が伸びなくなってしまった―寧ろ、ビールやワインを見ただけで、寝ているときの酔との格闘の、嫌なイメージしか泛んでこない―断酒した訳ではなかったが、飲まなければ飲まないでもいられるのであれば、飲まない方が、当り前だが身体への負担は其れだけ減る―もう一つ、就寝時間が九時過ぎになったが、寝るまでの間に読書の時間が出来たし、偶に執筆することもある―自然と早起きになり、午前中を其の分だけ執筆に当てることが出来る―

 もう暫く、此のままの生活が続くだろふ―

 お伊勢参り備忘録 3

 バルで夕食の際、翌日の日程を彼是と話し合った―元ゝ、翌日はレンタカーで伊雑宮へ脚を伸ばすのは決めていた、が、今日タクシーの運転手からお勧めのスポット等を聴いて、気持ちが揺れてきた―折角だから鳥羽水族館に行きたい、と云ふ者もいれば、夫婦岩を見たいと云ふ者―此方は当初、名古屋に昼過ぎに着ければ、其処から脚を伸ばして、某呉服店を覘いて見よふと考えていたのだが、其れも絶対に固執していた訳ではない―其処へバルの店主も参戦して、さらに噺はややこしくなった―

 結局、当初の予定通り、伊雑宮を目指そうと決定する―今回、二日目は外宮はスルーして、内宮から真っ直ぐに伊雑宮と決めた―

 翌日、朝八時、出発―今回のリニューアルになったホテル、料金が上ったが、其の分だろふか、朝食のバイキングはレベルがかなり高かった、一同満足―苦言を呈すれば、フロントが不慣れだったが―

 扨、内宮に到着して、駐車場へ入る―昼では満車で並ぶことになるが、此の時間は問題なし―昨日同様に夫ゝに手を合せて、御神酒等を買い、一時間弱で車に戻る―駐車料金は無料である―

 昨日、タクシーの運転手からアドヴァイスを貰ったが、取り敢えずはカーナビに從って走り出す―此方は距離は近いが、カーブが多いコース―其の通り、かなり狭い道幅を昇っていく―三〇分程で伊雑宮に到着―本日もまた快晴である―此方は参拝客はごく少ない―ゆったりと参拝して戻る―帰りは無料のバイパスを使ふことに―

 宇治山田駅に壱拾時参拾五分頃、到着―但し、レンタカーの返却に際して、事務所が混み合って、やや手間取る―其の間に、名古屋行の電車の時刻を調べる―時刻表では一時間に二本しか出ていないが、可笑しいな、と思い、切符売り場まで行って訊ねてみる―中には睫毛を濃く塗った、若いネエチャンが坐っている―すぐに時刻を教えて貰ったが、矢張り本数はもっと多い―一番早いの壱拾時五拾弐分、あと壱拾分ほどで到着する―一旦、戻って様子を見ると、レンタカーのキーは無事に返せたものの、他の二人が土産物等を物色中―近鉄の車内でビールでも、等と云い出す―此方は辞退、結局ビールは買わずに土産物だけ持ってレジへ―其の間に再び、濃い睫毛のネエチャンの元へ行き、名古屋まで四枚の特急券を購入―エスカレーターへと向ふが、一人だけナカナカ顕れない―残り時間、二分―やっと顕れてエスカレーターへ―ホームに到着して、一分で電車がやって来た―

 名古屋には一二時一五分頃到着―其処からホテルまで迷駅の中を歩いて、一二時半頃に荷物を預ける―実は伊雑宮では、近くにある有名な鰻屋でひつまぶしでも、と思っていたが、流石に時間が早すぎた―ならば、名古屋で、と云ふ者もいたが、ホテルの朝食にもひつまぶしがあって、昨年食べたが、ナカナカに美味い―結局、昨年寄った近くの洒落た蕎麦屋に、今年も入って昼食―此処で生ビールで、無事に終えたお伊勢参りを祝って?乾杯―壱時間ほどで、名古屋駅へと向ふ―此処のフロアを仕切っていた和服姿の女性は、気が効いて、感じが実によかった―

 扨、女子三人は水族館へ、此方は例の呉服屋を目指し、名鉄駅に向ふ―此の名鉄も迷鉄?らしく、乗り降りがナカナカに難しい―ネットでシミュレーションをしておいたが、果たして―いざ、ホームへ着くと、目指す緑色の掲示板が、間もなく急行の到着を告げている―待つこと一分で、お目当ての急行に乗れた―

 其の日の名古屋、気温二六℃、車内もかなり暑い―此方の坐った真後ろの窓からは昼の太陽が燦ゝと注ぐ―周りの乗客はかなりワケーのが多かったが、皆、スマホばかり見ていて、ブラインドを閉めようなどと気の利いたのはいない―暫く我慢していたが、間もなく立上がってブラインドを下ろした―其処で、プリントアウトした呉服屋までの地図を、旅行バッグの中に忘れてきたことに気づく―仕方なく、4Gのガラケーで検索してみる―が、繋りが遅い、字が小さいので、途中で断念―目指す駅まで五〇分、途中、眠くなるが、寝てしまっては相当に不味い―やがて、降車駅に到着―

 扨、駅の何方側だったろうかと、地図を思い泛べ、周囲を見渡すが、目印となる建物が見つからない―しかも、想像以上に人気のない駅である―特に駅前商店街のようなものも見当たらない―閑散とした中、当てずっぽうに右側へと進む―空地があり、公園のような佇まいだが、どうも確信がない―と思っていたら、眼の前に《交番》と書かれた看板が左手を示している―左に折れると、其処に交番が―早速、中に入って訊ねてみる―五〇代と思しきオジサン、呉服屋の名前を聴いて、いきなりスマホで検索し始める―え、そうなのか、此の辺りで有名じゃないのか、と不安になる―と、其処へ若い制服姿の警察官が顕れ、此方もスマホで調べる―すぐに見つけて、アドヴァイスを年上の警官に―ようやく見つかったらしく、今度は紙の地図を取り出して調べ始める―其れを確認しながら、今度はメモ用紙に、地図を書き始め、説明する―あれ?と云ふことは、駅の反対側ですか―礼を云って交番を出る―外は気温が上昇している―因みに、着物は例の珈琲を零した淡いグレーの夏紬の長着である―

 道順は真っ直ぐに進んで、信号を五つほど渡って右側である―通りは其れなりに大きく、車も走っているのだが、人通りはほぼない―と、間もなく数人が交差点の処で、何やらプラカードを抱えて立っている―ほゝう、アレだな、だが、どっちだろふ、ミギかヒダリか―前を通ると、プラカードには《9条を守れ》とある―まあ、其れを読まない前から、数人の方ゝの、折れ曲がった背筋と腰で予想は着いていたのだが―

 交差点の角には、拡声器が置かれてあったが、マイクを持っている者はいない―もし、いたら、そして此方が信号待ちの間に、チラシやら署名を求めてきたら―応戦体制はしっかり出来ていたのだが、其のオーラのせいか、誰も近づいてこなかった―きっと、暑さのせいで、お疲れだったのだと思ふ―

 其処から二つほど信号を渡って右折―おっと、三〇米ほど先に、其れらしき店舗が眼に入る―因みに、周囲に店舗らしきものはほとんどない―真っ直ぐに向って、ガラス張りの店内を覘く―若い女性が一人、和服姿で商品を並べている―ドアを開けて入店―早速、来意を伝える「普段着の着物で、洗える木綿のが欲しくて」と―さらに、ネットで予めお気に入りをピックアップしていたので、其れを告げると、すぐにノートパソコンを持ってきて調べてくれた―当初の第一候補は、三河木綿の淡いグリーンの長着である―すぐに、見本の反物を見せて貰ったが、あれ、かなり色が濃い―其処で、店員さんは奥に向って「店長を呼んで下さい」と聲を掛ける―

 間もなくして、「いらっしゃませ」と顕れた店長さん―実は此の店が配信する動画を、いくつか拝見している―思わず、笑みが溢れたのは、顕れた店長、此の店の参代目、其の動画で着ていたのと同じ、特徴ある柄の長着をお召になっていたためである―妙な感じである―まるでユーチューブ動画の中から、当人が出て来たような、或いは此方が其の動画の中に入ったような、そんな不思議な感覚に囚われたのだ―

              此の項続く―

 本日も執筆出来たことに感謝

 惟神霊幸倍坐世

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