由紀かほる「憂国記」

日記もどき 最新作の情報等ゝ

集英社版のあとがきは、富士川義之氏が書いている―ミラーの作品で評価出来るのは、此の《南回帰線》までで、其の後の《薔薇色》等は冗長で、讀む価値はない、と断言している

 皇紀弐阡八百六拾参年四月壱拾五日

 六時起床。ヨガ。

 酵素米朝食。

 更新を忘れていた三日前のブログを―

 皇紀弐阡八百六拾参年四月壱拾壱日

 六時起床。ヨガ。

 酵素米朝食。

 火曜日に仕事場に戻ったが、暴風雨の中、結局身内の車で駅まで向った―歩行者は傘を吹き跳ばされそうになりながら、歩いている―中には、もう諦めてずぶ濡れの人もいる―さらに交差点を跳ばされたビニール傘が、勝手に横断していた―

 駅に到着すると、間もなく隣の駅で、強風のために電車が停止したとアナウンス―一〇分ほどして、徐行で運転再開となった―今回は横浜まで行って、乗り換える―横浜駅では、ホームに出ずに階段の処で待っている乗客が多数―あまりの横殴りの雨で、ホームに立っていられないらしい―

 京浜線も遅れているが、羽田には余裕で到着―問題はフライトだが、搭乗は定刻に開始―着席すると、強風のため滑走路が一部閉鎖となり、離陸は参拾分遅れとなった―其れでも、追風のおかげで、フライト時間は壱時間壱拾分、つまり普段より壱拾五分も早い―

 千歳に到着するも、バス移動―気温弐℃とは此れ如何に―電車内も、駅でドアが開く度に冷気が流れ込む―長着に羽織では流石に寒い―其れでも、ほぼ予定の時間に仕事場に到着―暖かい珈琲でようやく落ち着く―

 扨、本日壱拾五日、一昨日辺りから俄に気温が上り、ようやくコートなしの羽織で外出―一昨日からは、新しい水色の久留米絣の長着で買物へ出掛ける―今秋末は再び、寒さが戻ってくるらしいが―

 ミラー《南回帰線》集英社版を讀み終える―其れまでの大久保訳、河野一郎訳と比べると、年代が壱阡九百七拾九年だけに、流石に訳語には馴染みがある―また、訳文自体、もっとも讀み易く感じた―此れで《南回帰線》を半年内で参回讀んだことになる―中身は判ってはいるが、訳の違ひ以外にも、作品自体に物語性がほとんどないだけに、立て続けに《北回帰線》《薔薇色の十字架》三部作を讀んだためか、夫ゝのエピソードがどの作品か判らないままだった―水声社と云ふ処から、さらに新訳が出ているので、どうれと、食指が動いたのだが―

 集英社版のあとがきは、富士川義之と云ふ東大の偉い方が書いている―要約すると、ミラーの作品で評価出来るのは、此の《南回帰線》くらいまでで、其の後の《薔薇色》等は冗長で、讀む価値はない、と断言している―全集だったら、こんなことは書けないだろふが、此の感想は実は大方の評価と合致しているのではないか―

 確かに今回《薔薇色の十字架》を讀んだ後、此の集英社版の《南回帰線》を讀むと、其の密度、緊張感、文面から泛び上る熱気のようなものがまるで違っているのが良く判る―昨年の夏以降、ミラーの全集を讀みながら、此方が感じていた感想も、富士川氏の指摘とほぼ同様だった―が、其れでも、飽きっぽい此方が兎にも角にも全集を読破したのは、其れなりに理由がある―以前も書いた通り、ミラーの饒舌体にうんざりして、放り出しかけながらも、時折、ハッとするような文章に出逢うからである―砂漠でオアシス、砂場でダイヤモンド、と以前も書いた―さらに、ミラーの作品は巨大な大河をカヌーに乗って下っていくような、そんな心持ちで讀むのが正解ではないのか、とも―風光明媚な処もあれば、見るのも不快な処、退屈な処、驚くような斬新な処、そんな景色が混在しているのであるから―

 此れも巷間指摘されていることかもしれないが、ミラーの作品は讀む側の心持ち、姿勢を試されると云えよう―其れが、ミラー自身どの程度まで意識していたかは知らない―従来の読書の在り方其のものを問い直しているのだ、と云ってみたいのだが―扨、水声社版まで手が伸びるかどうか―

 ファン・ゴッホ《書簡集》―先日、入手した此方を繙いてみる―此れもミラー効果だろふ―随分と昔、改訂版を所有していて、何処迄讀んだか完全に忘れている―或は、拾い讀みして其のままだったのかもしれない―

 頁を捲っていくが、肝心の《書簡集》に至るまでの前置きが長い―其れなりに貴重な資料であり、知識としては必要なものであるのは判るが、ちょっと長い―其れに、原文がどんなものか判らないが、どうも訳文がたどたどしい―また、《彼》を《かれ》(其の他にもあり)と表記する意味は何処にあるのか―讀み易さを考えれば、当然《彼》が正しい―近頃の愚かな日本の自治体みたいな、ひらがな変換を彷彿とさせる―と文句を云いつつ、ようやく手紙にたどり着く―

 本日も快晴、気温弐拾℃越え―此れなら、綿麻の着物でも気持ち良く歩ける―

 本日も執筆出来たことに感謝

 惟神霊幸倍坐世

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